七月六日、想い出の街、アールにさようなら
朝、朝食に間に合うように起きる。軽く荷物を纏め、朝食を採る。最近は必ずと云って好い程誰かと朝食を共にしていたのだが、今日は誰も居なかった。ベルギー少女は先に食べたのだろうか、他の皆はもう行ってしまったしな、と想っていると、先生が来た。他の二人はまだ寝ているらしい。毎日長時間行動している所為で、疲れたのだろう。
話をしながら、二人で朝食を採る。彼女とは気が会うのか、一番話をした。家族の話、彼氏の話、仕事の話、想う事、考える事。価値観や判断基準が近いのだろうか。好い友人が出来たと想う。この先生なら、教えて貰った子供達は好い子に育つだろう。そう想える人だった。
朝食を終えた頃になって、他の二人が現れる。とは云え時間を越えてしまっているので、パンだけくすねてその場を去る。適当なホステルなら食べさせてくれるんだが、此処はそう云う訳にはいかない。
荷物を纏め、取り敢えずホステルに置いておく。次の目的地も遠くは無いので、二十時頃迄に電車に乗れば好い。今日もアールの街中を、ぶらぶらと話をしながら歩いて行く。
街の西側は、非常に綺麗な家々が建ち並んでいた。沢山の花が有り、建物はプロバンスのイメージ通りだ。適当に撮っていたら好い写真が出来た。モデルは先生。後姿なので問題ないだろう。と云う勝手な考えにより掲載。
取り敢えず猫は居たら撮る。そして大した写真じゃなくても載せる。
町をうろうろ。何かあんまり上手に撮れてないなぁ、と想ったんだが、好く考えたらこの時、ずっとスナップモードで撮ってた。試しに、と想って見たのだが、あんまり駄目だな。飲み会とかパーティーとか、そう云う時だけ使うことにしよう。
愛らしい寝顔である。
か、可愛すぎる…!
右に写ってるのはモデル役の子。もう一人が写真を撮ってるのを好い事に、勝手にこっちでもモデル扱い。ただ立ち位置が惜しい。で、立ち位置が好い写真は、花が呆けている。上手く行かない物だ。
綺麗な町並みだ。
猫も多いし。
こいつはずっと鳴いていた。
ズームが欲しいなぁ、と想いながら撮影。黄土色の壁と、薄い水色の窓、濃い緑のタオルと、横には薄紫の布。綺麗に切り取りたい色合いだった。
美味しそう。
ベルギーへ来れば美味しいお菓子を食べさせてくれると、ベルギー少女達は云っていたので、是が非でも行かねばならない。と云うか寧ろ元々の予定である。
街の中心部へ歩いて行き、広場で一休み。ヴァイオリンの様な、変わった楽器を演奏している人が居たので、其れを暫く聞いていた。アイリッシュの民族音楽的な、そう云った雰囲気の曲だった。嫌いじゃない。好い気分になる。
彼女達がお土産を買いたい、と云う事だったので、付いていく。まぁ、特にすることが在る訳でもない。
アリーナで楽団が演奏しているのも見た。
その後は如何するか全く考えて居なかったのだが、丁度Tour de France(自転車のレース?フランス中を走るらしい)がアールを今日通過する、と云う事だったので、其れを見て見る事に。
予定では十四時か十五時頃に通過する、と云う事だったので、まだ時間が在る。涼しいのは日陰、と決まっているので、観光案内所の近くに座り、話をして過ごした。僕はフランス語の勉強をしようと想い、本を開く。
そう云えば書き忘れていたのだが、アールのホステルに泊ったとき、他の客が忘れたらしいフランス語の本を手に入れたのだ。BBCから出されている英語の本で、比較的使えそうなフレーズやら単語やらが並んでいる。丁度好い教科書になるので、貰って置いたのだ。
先生にフランス語を教えて貰っている間、他の二人は友達に送るポストカードを書いていた。最後には何故か僕の名前も書いてくれと云われたので、春永と書いて置く。特に問題ないだろう。
十五時頃になって、そろそろ来るかな、と云うことで道路脇に立って待つことに。
宣伝用の車は幾らでも来て、色々な物を放り投げていく。キーホルダーだったり、Tシャツだったり、水だったり。キーホルダーを一個拾った。
然しその後は中々来ない。この写真は来る寸前の写真なのだが、車の写真との間には二時間半の差がある。
来ない。ずっと来ない。と云うことで途中で一度カフェへ行き、ジュースを飲み、もう好い加減来るか!と云う時になってからまた三十分程待つ。
そして漸くトップ集団が来た!と想ったら二秒で通過。写真なんて撮れやしないし、肉眼でも一瞬しか見れない。
その後また十分程して、漸く二軍目が到着。と云うか其れで全部だった。
わっさー。
と居るのは好いのだが、二軍目も十秒以内で終了。即ち、待機時間=五時間程、ツアーを見た時間=十二秒程度、と云う感じである。
皆で、え、終わり?今ので終わり?と云いながら暫く其処にいると、次々と人が去って行く。どうやら終りらしい。
時間の無駄にも、程が在る…。
と云う訳なので余程の自転車狂以外は見ない方が好いです。と云うか、わざわざ此れを見るために海外から来る人も居るらしいので、世の中どうかしてると想った。エンターテイメントとして、成立してない気が…。
もっと早く通過すると想っていたので、昼食も食べていなかった。皆空腹なので、さっさとその場を離れ、食料を確保しに行く。スーパーへ行き、パンやらサンドイッチやらを買い、ホステルに戻る。
戻って昼食兼夕食を食べる。
夕飯を食べて暫くすると、もう出発する時間になっていた。荷物を受け取り、駅へ向かう。彼女達もわざわざ付いて来てくれた。駅までは歩いて三十分程。疲れているだろうに、申し訳ない気分になる。とは云え嬉しい。
チケットを買い、電車が来て、お別れ。マルセイユはユースホステルが満室だったので、先にエクサンプロバンスへ行くことにした。
彼女達は涙と共に送ってくれた。過ごした時間は五日間程。何だか二週間位居た気がする。元々はこんなにも長い間アールに滞在する予定など無かったのだが、人との出会いで流れは変わる。過ごした時間其の物よりも、交わした言葉の数は多い。そう想う。
電車に乗って暫くして、マルセイユが見えてきた。普段であれば次の町へ想いを馳せるばかりなのだが、今回は少し、アールが名残惜しく想える。夕焼けに染まっていく空は、何時もより感傷的にさえ映る。
マルセイユで電車を乗り換え、エクサンプロバンスへ向かう。
少しずつ夕闇へ染まって行く空は、とても美しかった。
着いた頃には真っ暗。地図が無いので困っていたのだが、適当に見つけたホテルに入って聞いてみたら、地図を貰えた。バスはもう無いから、タクシーに乗ったほうが好いよと云われたのだが、歩く事にする。距離は2km、とは云え直線距離なので、実際はもう少し遠い。
カジノの華やかな噴水を見ながら、ホステルを目指す。歩いて四十分弱だった。汗だくになりながら到着。チェックインを済ませ、シャワーを浴び、すぐに眠る。