十一月六日、怠慢のツケ、Inverness

2010.03.25

朝、十時前に起き、荷物を纏めチェックアウト。町を見てみようかとも想ったのだが、生憎の雨だったので諦めた。と云うか、昨日一昨日と晴れていたのは本当に運が好い。

朝食にパンと紅茶。その後はラウンジでネットを使って過ごしていた。この日は冷え込み、酷い寒さだった。

夕方、十七時十五分の電車を使いInvernessへと向かう予定だったのだが、怠慢の為に逃してしまった。怠慢と云うか、単にだらだらし過ぎたと云うか。初めはバスに乗り橋を渡る心算だったのだが、何を考えたか歩くことにしたのだ。理由は簡単。最後に紅茶を飲みたかったから。

紅茶を飲みながらのんびりして、さて出るかとホステルを出てからかなり時間が押していることに気付いた。いやもっと早く気付けよ。

荷物を担いだ状態で走る物の、相当しんどい。尚且つ、町に入ってから駅までの距離を勘違いしており、結果として電車の時刻から二分遅刻となった。そして、電車は出ていた。

幸いにして電車のチケットは£7.5だったので、ダメージは少ない。然しながら事前に予約しておきながら、自分の怠慢が原因で逃してしまったので、かなりがっくり来た。次からは絶対に逃すことはしまいと誓いながらも、取り敢えずどうやってInvernessまで向かうかを考える。

この時点で辺りは真っ暗。尚且つInvernessまでは結構な距離があるので、ヒッチハイクは少しリスクが高い。と云うか、こんな時間にヒッチハイクしてる奴なんてあんまり拾いたくないのが普通だろう。

駅には誰一人として居らず、受付も待合室も閉まっている。誰も居ない。

掲示板を見てみると、タイムテーブルが貼って有った。其処には電話番号が書かれていたので、取り敢えず電話してみて、後の電車が出ていないか確認することに。携帯電話、ちゃんと持ってて良かった…!とこの時ほど想った時はない。

電話をしてみたものの、やはり電車は無いらしい。バスのタイムテーブルは判るかと聞いてみると、其れは判らないけど電話番号なら教えられる、と云う事だった。

番号を控え、改めて電話。すると今から一時間程でバスが一台、Invernessまで出ているらしい。チケットは£17。既に予約していたホステルの代金とチケット代を天秤にかけ、Invernessへ向う事に。

バス停まで向かい、一時間待つ。一応風がある程度は防げるようになっていたが、その日は特に風が強く、冷たい。縮こまりながらバスが来るのを待った。二分遅れた為に、金の無駄、時間の無駄、体力の無駄、何もかも無駄だ。そんな事を、自戒の意を込めながら想っていた。自分に腹が立つのが、一番嫌だ。

漸く現れたバスに乗り込み、Invernessへ。暖かい車内が嬉しい。バスで二時間程。車内ではぼんやりと過ごす。

バス停から徒歩で十五分、ホステルに着き、チェックインを済ませる。取り敢えず食べる物が無かったので、スーパーへと向かい、食材を買う。

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ネス河らしい。

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ホステルを出て直ぐの場所から見える景色。

戻ってスープを飲んだり夕飯を食べたり。ホステルには猫がいて、暖炉付きの好いラウンジがあって、居心地が好かった。

その場に居た中国人二人、ノルウェー人二人と話をして居た。

其処までは好かったのだが、同室に居た一人の男が迷惑この上なかった。どうも長い間ホステルに居るらしく、自分の部屋の様に過ごしているのはまぁ好いとしても、グデングデンに酔っ払って、大音量で音楽をかけた状態で倒れるようにして寝ているのだ。

馬鹿かこいつは、と想いながらも声を掛けるのが嫌だったので、耳栓をして一時頃に眠る。

十一月五日、Staffin、崖、海岸線、風と波、鳥の声、滝、美しい夕焼け

2010.03.24

朝、十時過ぎに起き、準備を済ませて外へ出る。

バスに乗りBroadfordまで向かい、バスを乗り換えPorteeへと向かう。そして島の北東であるUig、Staffinをぐるりと回るバスに乗り込んだ。島の西側にある古城へと向かう事も考えたのだが、丁度バスが来ていたので其れに乗った。然し、其処に何が有るのか全く知らない。

自分が何処へ向かっているのか、地図の上で知っているだけだ。それでもバスに乗る時、運転手が「何処まで行くつもり?」と聞いたときに、何となく「Staffinまで」と答えていた。云ったのだから其処へ行こうと、そう想って座った。

何処だって好い。何も知らなくて好い。兎に角何処かへ行けてしまうのは、とても楽しい。

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バスの外に広がる綺麗な景色を眺めながら、目的地に着くのを待った。

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見ていて飽きない。

そして暫くすると「着いたよ」と運転手が教えてくれた。バスを降りる。

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バスを降りると、何も無かった。遠くに数件の家屋が見える程度で、何もない。片手には山々、もう片手には海が広がる。車は殆ど通らない。

そんな中でも小さな商店が有ったので、水とクッキーを買った。ポリポリとクッキーを食べながら、道を歩いていく。すると海岸へと通じているらしい路が有ったので、そちらへと向かった。

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嗚呼、美しい。何と美しい景色か。そう想った。一軒の家が建ち、奥には山々が連なり、海岸線が弧を描いている。波の音がざあざあと響くばかりで、他には何も無かった。人も見えない。ただ情景が広がるばかりだ。

丁度好い岩が有ったので、其処に座ってスケッチを取る。

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奥へと進む路が有ったので、そちらへ進む。

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海岸沿いに、崖の下を歩く。遠くに島々が見える。空は青く、何処までも広がる。

歩いていくと崖の上へと登れる路が有ったので、登ることにする。碌な靴も履いていないのに、懲りもせずに進むのが馬鹿である。

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既にぐちゃぐちゃだった靴を更に泥まみれにしながら、崖の上へと登った。然し、泥まみれになった甲斐は有った。

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静かな場所だった。

遠くには集落が見え、その先には険しい山々が見える。その脇からは海岸線が緩やかに伸び、海の先には島が浮かぶ。空は遠く青く、空気と共に澄んでいる。

風と、波と、名も知らぬ鳥の鳴き声が聴こえるばかりだ。少し離れた場所には、羊が数頭、草を食んでいる。耳を澄ませば、彼らが草を千切る音さえ聴こえる。

誰も居ない。ただ静かで、穏やかな世界が香るばかりだ。

透き通った空気を深く吸い込む。ゆっくりと、深く、深く。透明で冷たい空気が、肺を一杯に満たしていく。

ゆっくりと息を吐く。遠くの島々を眺める。風の音を聞く。波がざわめく音がする。草の掠れる音がする。冷たい空気の流れを感じる。目を閉じる。暗闇の中に、自然の音が木霊して行く。鳥が、鋭く鳴き声を上げた。

音に溢れた、静かな場所だった。

来た道は戻らず、村の方向へと進む。水路沿いに進んで行き、村の中へと戻る事が出来た。途中、散歩している地元の人とすれ違った。日常的にこう云う場所を持てるのは、素敵だ。

その後バス停まで戻った物の、バスが来るのはまだまだ先だ。道端に立って、ヒッチハイクする。

流石に此処まで来ると交通量が非常に少なく、車自体があまり通らない。それでも三十分程で止まってくれた。

Inverness(ネス湖の近くに有る町)まで向かうのだと云うおじさんに乗せて貰い、Porteeまで。途中で「近くに有る滝は見た?」と聞かれたので「見てない(寧ろ知らない)」と答えると、其処に連れて行ってくれた。

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海に直接流れ込む滝は、初めて見た。

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写真だと判らないが、遠くには島も見えた。

その後Porteeまで向かい、其処からはバスで戻る。

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ホステルの直ぐ近くまで行くことも出来たのだが、夕焼けが綺麗だったので途中で降り、橋を渡る事にした。

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此処まで美しい夕焼けを、見たことが有っただろうか。

柔らかなグラデーションを描き、島々はシルエットとなって浮かぶ。闇に溶け入る世界で、僕はただただ、その美しさを目に焼き付ける。その柔らかさ、優しさ、言葉にならぬ、美しさを。爽やかでいて、とろみの有る甘い情景。

そして、こう云った言葉の、何と虚しいことか。伝わらない情景。美しさ。

その後は町のスーパーで夕飯を買い、ホステルで調理。夕食後は本を読んだり、アニメ見たり。夜は一時頃に眠る。

十一月四日、古城、ヒッチハイク、Sligachan、Portee、スカイ島の美しい景色

2010.03.24

朝、アラームをかけていたが起きる事が出来なかった。十一時頃まで眠る。

起き上がってみると外は久しぶりの快晴、直ぐに準備を済ませ、外へ。ホステルから少ししか離れていない場所に有る古城へと向かう。

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青い空に低い雲が浮かび、水面に景色が映る。スカイ島にはそんな景色が溢れている。

別に古城其の物へ辿り着く必要は無かったのだが、何となく歩いてみた。景色が綺麗だと歩くのも楽しい。

その後一旦ホステルに戻り、昼食をとる。

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このホステルには猫が居た。人懐っこい愛らしい猫だ。ホステルの中庭で日向ぼっこをしていた。

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ホステルの正面から見える景色。隣に有るのがスコットランド本土。その間は橋で結ばれている。

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スカイ島内部へと向かうバスを待つ。

ホステルのスタッフに何処かオススメの場所はないかと訊いていたので、目的地は決まっていた。島の中程に有るSligachanと云う場所だ。然し問題は、其処まで向かうバスが無いと云うことだ。なので途中まではバスで向かい、其処からヒッチハイクと云うことになる。

十二時半のバスに乗り、一旦Broadfordへと向かう。其処から目的地方面へとぶらぶら歩いて、車が来たタイミングで親指を上げる。実際の所ヒッチハイクなんて今まで一度もしたことが無かったので「本当に止まってくれるのだろうか…」と云う感じだったのだが、其れは全くの杞憂で、交通量が少ないにも関わらず五分以内で車は止まってくれた。

乗せてくれたのは子供連れのお母さん。Sligchanまで行きたいんだけど、と伝えると、其処までは行かないけど、途中までなら、と云うことで乗せて貰った。

車で十五分程だっだろうか。車内では色々と話しをしていた様に想う。そして結局「子どもがまだ寝てるから」と云って、目的地まで連れていってくれた。有り難い。

車内で話しをしながらも、僕は窓の外に目を遣らずには居られなかった。何処までも連なる山々、湖、空、雲。云い表すことの出来ない美しい情景が、広がり続けている。

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日差しが強すぎて綺麗に写せない。

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写真なんかで見るよりも、実際はもっと美しい。

河沿いに少し歩いていたのだが、先日まで続いていた雨の所為だろう。路が相当ひどい状態になっていて大変だった。装備も何もない適当な格好で歩いていたので、足が泥まみれになった。然も最初に歩いていた路が判らなくなり、最終的に小さな崖から飛び降りて車道に出た。何をしているのやら。

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写真だとどうしても平面的で面白くない絵になってしまう。スカイ島ではスケッチを好く取った。美しい景色は、写真よりも記憶の中で美しく映える。

その後またヒッチハイクをして次の場所へと向かう。とは云え交通量が非常に少ないので、車が通るのを待ちながらスケッチを取っていた。台数的には五台目くらいで止まってくれたが、二十分程かかったように想う。それでも直ぐに止まってくれる物だ。

乗せてくれたのイギリスから移ってきたと云う、元消防士のおじいちゃん。Porteeまで乗せて貰った。好く考えてみると彼は僕を降ろした後、来た道を引き返して行ったように想う。彼もまた目的地よりも先の場所に連れて行ってくれたのだろうと想うと、この島の人達は本当に親切にしてくれる。ヒッチハイクをする人間が多く、皆慣れている、と云う事も関係しているのだろう。

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Porteeの町を歩いた後、スケッチを取ったりした。町自体は小さな普通の町だが、周囲の景色が好い。

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町の周辺をうろうろと歩き、適当な所で切り上げ、バス停へ。

然し運悪くバスを逃した直後だった。今想うとこの時直ぐにヒッチハイクでもして戻っていれば好かったのだが、戻るバスがまだある状態でヒッチハイクをする事に違和感が有ったのでバスを待つことにした。人の好意に甘え続けるのが、少し怖いからだろうか。

次のバスは二時間後だったので、町を歩いたり、またスケッチを取ったりで時間を過ごす。もう少し暖かければ景色を眺めてボンヤリともしていられるのだが、生憎寒い。それも当然だ。スコットランドの北に位置し、海からの風がなければマイナス数十度になっても可笑しくないような場所に居る。普通に過ごせるだけでも有り難い。然し、やはり寒い。

バス停で一時間ほど待つも、バスは来なかった。タイムテーブルには最後のバスが来る筈だったのだが、どうも違う時期のタイムテーブルだったらしい。地元のバスではなく、スコットランドの都市間を結ぶCitylinkバスが居たので、其れに乗って帰る羽目になってしまった。地元のバスであれば£3程度なのだが、Citylinkなので£10かかってしまった。バスの中では眠ってしまう。冷えた体に、暖房が有り難い。

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ホステルに戻り、芯まで冷えてしまった体を温めるため、シャワーを浴びる。熱い湯が心地良い。

ぬくぬくとした所で、夕飯を食べる事に。

キッチンでは一組の夫婦が料理をしていたのだが、その二人はPorteeの町ですれ違った二人だった。オーストラリア人で、僕とは逆方向で旅行しているらしい。ギリシャから出て、北西方向へと進む形だ。彼らがこれまで訪れた国の、オススメの場所を話で聞く。行くつかの場所の名前を控えて、彼らとは別れた。

夕飯後は日記をつける。二十三時頃には部屋に戻り、早めに寝るとする。