六月二十四日、美術館、ヘッドフォン、カルテ、ボルドー
朝、今日はちゃんと朝食を食べるぞと想い、早めに目を覚ます。とは言え九時までの朝食に間に合わせる為なので、八時半頃にちゃんと起きた感じだ。
朝食を済ませ、荷物を纏めてホステルを出る。美術館までは歩いて十分程度。一旦駅へ向かい、荷物を預けようかとも想ったのだが、€4もしたので止めて置いた。美術館内は大抵荷物置き場があるので、それまでの道程を頑張って歩けば良いだけである。
そして着いたは良いのだが、まだ開いていなかった。下手に早起きすると、こう云うことになる。そう云えば確かに、朝九時からやっているような美術館は無いよな、と想った。仕方が無いので、すぐ横の公園で時間を潰す。写真は美術館すぐ側、お城。
最初に入った部分は美術館の特別展的な部分だったらしく、入場無料だった。中は真暗で、壁一面に映像が映し出されていた。映像は胎児のようにも見えるがそうではなく、海を泳ぐ鯨の映像だった。白黒の大画面映像と、大きなサウンド。空間自体をアートとしているらしい。命の力強さとか、そう云った感じだろうか。鯨は大きくて、優しそうだと想った。
開館直後に入ったので、中には当然誰も居ない。独りっきりのまま、その映像を見ていた。初めは完全に真っ暗だった空間も、暫くすると目が慣れて、辺りを見ることが出来る。人間の目は、センサーとして本当に優秀だ。此処最近認識関係のアートを良く見ている所為か、果たして今自分が見ている景色は、本当に見えているのだろうか、等と考えた。人間が空間を認識し始めるまで、暫くの時間が掛かる。其れは目が慣れるまでの時間だが、空間的に脳内で把握し始めるまでのタイムラグ、とかだったら面白いな、と想った。実際には見えていないのに、脳が景色を見せている、とか。まぁ単なる思いつきなので実際には人間の目が非常に繊細で、見えているのだろうけど、そう言うことを考えるのは愉しい。若し、それがそうだとしたら、空間を認識する上での捉え方が大きく変わるなぁ、とか、何とか。妄想の世界。
その後建物をぐるりと回り、美術展の入り口へ。
先程見たのが左の展示。今から見るのが常設展と、右の展示。
入場料は若者割引で€3.50。安い。ありがたい。
この美術館は親切な人が多い。僕が偶々そう言う人に当たっているのかも知れないが、荷物を置けるか聞いた時にわざわざ場所まで案内してくれて、そして荷物が大きすぎたので這入らなかったのだが、ちゃんとカウンター側に置いてくれた。その後は丁寧に順路の説明までしてくれる。展示を見ていると(暇なのかも知れないが)にこやかに声を掛けてくれるし、非常に居心地が良かった。
初めは十三世紀から十八世紀頃までの美術を見て、その後は近代、そして現代アートへと進んでいく。今日は珍しく、古い時代のアートも時間をかけて見ることにした。シンボリックに描かれる世界の中で、何を語ろうとしたのか。その絵が何を意味するのか。そう言うことを考えながら見ていた。多分、ちゃんとした知識があれば愉しいんだろうなぁ。僕は精々「目隠しをされた子供の天使は何を意味するんだろうか」とか「あれはデーモンかな」とかそんな事を思いながら見るだけである。
モネも少しだけ置いてあった。見た瞬間に判る。やはり面白い。
好きだったんだろうな。
その後はモダンアートを見た後、一番大きく扱われている展示を見た。
やわらかいクッションが置かれていて、寝転ぶことが出来る。寝転びながら、ぼんやりと宙に浮かぶネットに包まれた、柔らかそうな物体を見ていた。其処でもやはり、美術館の係員が来客に対してアートコンセプトを説明したりと、良い雰囲気だった。多分好きだから此処にいるんだろうな、と想う。それはとても大切なことだ。
その後また荷物を背負い、街まで向かう。ヘッドホンを手に入れる為である。と言うか、本当に何故日本に残してきたのかが判らない。朝寝坊して、慌てた状態で判断したからだろうな、と想う。
昨日発見した店へ向かい、ヘッドホンを選んで、購入。今思い出したのだが、昨日はサンダルを買った。サンダルも日本から持ってくるのを忘れた一品である。街中をうろうろしている時に買ったのだが、€60もした。何故か幾ら歩いても高いサンダルしか置いてる店が見つからなかったのだ。何処でも同じような値段だったので、ええいと想い、かっこいいのにした。無駄に本皮使用である。フランスまで来て貧乏旅行してると言うのに、無駄な出費をしてどうなるのか…。とは
言え此れで凶悪な足の臭いから開放される(毎日相当な距離を歩く所為で、凶悪)と思えば、安いものである。
ヘッドホンは別に必須ではないのだが、やはり音が重要な位置を占める人間としては、この小さなパソコンのスピーカーでは聞くに堪えないと感じたからだ。こちらは€30。AKGのDJ ヘッドホンがある!と一瞬テンションが上がってしまったのだが、それは€99だったので流石に我慢した。買ったら本当に馬鹿である。それでも€30出してる段階で馬鹿なのだが、コンパクトながら音は非常に満足の行く物だったので、まぁ良いだろう。
その後ケバブを買い、昼食として食べながら駅まで歩く。余りにも日差しが強く、暑かったので、途中から城の辺りで座って食べることにした。
天気が良く、日差しが強い。木蔭に座ると、ちらちらと零れた木漏れ日が実に心地良い。ついさっきまで非常に暑かったのに、日差しを遮るだけで涼しくなる。乾いた風が吹いている。快適だ。
ケバブを食べ終わり、水をがぶがぶと飲み干し、また駅まで歩いて行く。
駅に到着し、チケットを購入。その時、昨日韓国人から聞いた「カルテ」と言う若者向けの割引チケットを入手するこにした。最初はユーレイルパスでも買おうかと想っていたのだが、計算してみるとどうやらカルテの方が使い勝手が良い。
二十五歳以下であれば、発行手数料€49は掛かるが、以後一年間、ヨーロッパ中の鉄道が最大半額になる、と言うものだ。最大、とは言え、大抵の場合で半額になる。
若し一日の移動距離が片道€60~80以上の場合は、各種ユーレイルパスを入手した方が安い。然しそれ以下の場合は、カルテを使い半額にして、€30等にしてやればいいのだ。少しずつ移動して、いろんな場所へ行くような旅の場合、カルテの方が安上がりになる。
今回ナントからボルドーまで、カルテを使用して€21.40と言う安値だった。距離は凡そ370km。この調子だと、一日の間に五時間以上(適当)電車に乗って移動する場合、ユーレイルパスの方が安そうな印象である。ナントボルドー間は三時間強。まぁ、そんなに長距離を移動することも無いと想うので、これからはカルテにお世話になる。と言うか、此れまでは25%offだったので、少し損をしていたと言うことか。まぁ、比較的早い段階で良い情報を知ることが出来た。
今は電車の中で、音楽を聴きながら記事を書いている。やはり音楽が有ると良い。特別きちんと聴いている訳ではないのだが、何か音があると文章も書きやすくなる。着いてからのことは、また夜に書こう。ボルドーに着くのは十八時過ぎ。後二時間と少し、田舎の景色でも愉しむとしよう。
ボルドーに到着し、また地図を貰い、ユースホステルを目指す。駅からは徒歩で十分程度だった。
チェックインを済ませて部屋に這入ると、フランス人の先客が居た。仕事の都合で来ているらしいのだが、海外にフランスの食品を紹介する仕事らしい。なのでボルドーに来て、ワインを味わい、それを紹介するのだとか。と言うわけでボルドーに来てからの仕事は観光らしい。何と言う羨ましい仕事。
色々と話を聞いて、気付くと時間が経っていた。話をするのが好きなのだろうか、かなり色々と話をした。二十時頃になり空腹を感じ、外へ。
ホステルの近くには余り店は無く、少し疲れて居たので、ケバブを買って帰る。ポテト付きで€3。安い。パリでは€6くらいだったので、半額だ。
それを食べている時に、ナントで知り合った韓国人と再会。適当に話をして、その日は部屋に戻り、またフランス人と話をして、二十四時頃に寝た。